北海道その１（札幌）

夏、寝台特急の北斗星に乗って、初めて北海道へ抜けた時の、朝の風景が忘れられない。 　本州と植生の違う自然の中に、人工物は走り行く列車のみの、太古の原生林のような、何かの画面を見ているような、知らない生き物が今にも現れそうな、音のない、異空間であった。 　私は横になりながら、眺め続け、私が目覚めていることに気づいた旦那が、おはようと声をかけるまで、どのくらいボーっとしていたかわからない。 　それくらい感激したのである。 　以来、夏になると北海道に行きたい病にかかっているのだが、先立つものの関係で、毎年というわけには行かない。 　私にとっては初めての北海道であるが、旦那にとっては学生時代に青春を謳歌したところであり、慣れ親しんだ札幌の街である。 　札幌は大都市であるのに、どこかのんびりしており、ゴミゴミしていない感じがする。 　駅前は、片側３車線、一方通行が多いので、慣れない私にとっては運転し辛く、レンタカーで移動するのには、ひと苦労である。 　 　だが、一度街なかを抜けると、信じられないほどの見通しと、豊かな自然が待っている。 　こんなにだだっ広いところを、どこまでも走っていけるのだと思うだけで、もう幸せ、である。 　高速に乗らなくても、何の障害もなく走ることができる。急ぎたい人はどんどん追い越して行ってくれるし、道が広いので気にならない。 　時間が、そのまま計算できる快適さであった。いつも家の近くなら１時間かかる距離が、10〜15分で着いてしまう。 　初めての快適な北海道ドライブの旅は、家に戻る際、疲れたからと、空港からタクシーを利用した。 　地元の車に乗ると、道の混み方や走り方で、帰ってきたなーと、しみじみ感じていた。 　そして、その夜は、地元では有名な花火大会が開催されており、賑わっていたらしい。 　大きな花火が上がったとき、それに気を取られた後続車に追突されるという、見事な落ちが付いた旅であった。しくしく‥。